大阪高等裁判所 昭和29年(う)688号 判決
次に原判示第二の建造物侵入の事実につき検察庁は公衆の出入する場所であり、管理者は特定人に正当の理由なく出入を禁ずることは認め難いところであり、本件住居侵入の公訴は棄却せらるべき旨の論旨について考究するに、凡そ官公署内への出入が一般に解放されているのはその執務に関し正常な用務を帯びて平穏に民衆の出入することに応ぜんとするがためであるから群集が押寄せ不穏の形勢がある場合公安上看守者がその庁舎内への出入を禁止するが如きはもとより法の許容する処置である。本件において当日群集が奈良地方検察庁へ押掛け不穏の状勢下にあつたので、これに対し同検察庁看守者が公の秩序維持の見地から同庁内への立入を禁止し奈良市警察署々員においてその警戒に当つていたことは原判決挙示の証人宮角寅之助同藤岡敏一に対する原審裁判所の各証人尋問調書並びに証第一号の写真に徴し明白であつて、右禁止が不当のものとは到底認め難く、しかも前示証拠によればその群集の先頭に立つていた被告人平尾喜八郎が他の者等と共に正常な用務もないのに右警察職員の制止を排して同検察庁の構内へ立入つたことが認められるから被告人平尾喜八郎は建造物侵入の罪責を免れないことは勿論でありこの点に関する公訴を棄却すべき理由は何等見当らないのである。
(裁判長判事 吉田正雄 判事 山崎寅之助 判事 大西和夫)